スイミングゴーグルのVIEW

Blade ZERO 開発秘話

多くの競泳トップスイマーを中心にそのシェアを拡大し続けているBladeシリーズの究極形態ともいえる製品がついに完成した。その名は「Blade ZERO」。

開発担当者である安部、石川がBlade ZERO開発におけるエピソードを語った。

ZEROの名前が持つ意味

「実は初代Blade(V120)の開発がスタートした時点で、ZEROの製品イメージ(形)はすでにあったのです」と語る安部。「しかし、技術的な問題でなかなかそれを実現することができませんでしたが、Blade(V120)、Blade+30と順調に開発を進めていき、非常に多くの競技系スイマーの支持を獲得することができました。そして、次に出すモデルこそは、我々が長年思い描いていたBladeの理想形を具現化しようと決めていました。低抵抗化を突き詰めると、この形しかないのです。」

長年にわたる構想と低抵抗化に対する強いこだわり。その形を実現するために、開発者ゆえの悩みも多かった。「前モデルのスイミングゴーグルまでに低抵抗化を実現するためのアイディアは殆ど投入されていました。残されていたのは唯一、ストラップの穴をレンズから無くして、更なる低抵抗化を実現することでした。」

そこで、初代Blade(V120)開発当初から考えられていたのが、ストラップを通して折り返すための“サイドアーム”をゴーグルレンズに直接(インサート)成形によって固定してしまうこと。しかし、言葉では簡単に言えるこの手法が困難を極めた。

「レンズにサイドアームを一体成形するには、非常に高度な成形技術が要求されます。金型の精度はもちろん、成形する時にかける圧力、成形温度など、少しでもバランスが欠けると上手く成形できません。そのバランスは製品のカラーごとに違う程シビアです。」

試作に次ぐ試作、テストに次ぐテストを繰り返し、ようやく満足できる製品が仕上がるまでには予想以上の月日が流れた。日本でトップレベルのスイミングゴーグル製造技術を誇るタバタをもってしても、仕上げの綺麗さと溶着強度の両立を図る作業は極めて難易度が高かったのだ。

最初の試作品が出来上がった時、思い切った形状に社内でも賛否両論だったという。「良い事も悪い事も色々言われました。でもそれだけBladeシリーズに対して皆が熱い想いを持っているということで、自分としては開発のモチベーションがより上がっていきましたね。」
幾多の困難を乗り越え、ついに新しいBladeが完成した日、安部はその製品にBladeの原点を意味する“ZERO”と名づけた。

レンズのブレを抑えるサイドアーム

Blade ZEROの最大の特徴であるサイドアームは、2本に分割する事で顔へのサポート感を増しつつ、レンズ上下をワイドに固定。従来のレンズを1点で固定しているストラップ等よりも飛び込みやターン時のレンズのブレを抑えることに成功した。

また、サイドアームはより顔に食い込みやすい構造になっている。「流水抵抗とブレの少なさは、まるでスイミングゴーグルが顔の一部になっているような感覚です。是非全ての競泳スイマーに体感していただきたいですね。(安部)」

投影面積を従来Blade(V120)より5%カット

このサイドアームの採用により、更なる低抵抗化が実現した。レンズと一体成型することでストラップの通し穴が無くなり、従来のBlade(V120)より投影面積を5%カットすることが出来たのだ。

「“5%”という数字だけを見れば少ないように感じると思いますが、Bladeシリーズ自体、すでに流水抵抗を極限までに抑えたモデルなので、非常に大きな進歩だと思っています。実際に複数の大学水泳部に依頼して行ったモニターテストでは、今までのBladeシリーズよりも更に抵抗が少なくなったという意見が殆どでした。」と自らも学生時代に水泳部に所属していた石川は語る。

トップスイマーの着用率が高まるBlade ZERO

石川自身もBlade ZEROの使用者の1人だ。 「プール仲間から“その水泳ゴーグルかっこいいね”とか“気に入って使っているよ”って、よく言われます。開発に携わった者としては、とても喜びを感じる瞬間です。」

「競泳層のスイマーが一所懸命に頑張っている姿を見ると、もっともっと良い製品を作りたいという意欲が沸いてきます。」と目を細める安部。

「しかし、Blade ZEROは理想形であり、ある意味完成形ですから、これを超えるBladeを作るということは本当に至難の業です。でも、だからこそ、それはタバタにしかできない仕事だと思っています。」